素直な受験生を目指して〜自分を真正面から受け止める〜

 

 前回は中学受験生に求められる学力の一端として、目標達成までの方法論について考えました。今回は、その目標達成にあたって子どもたちに必要となる精神力についていくつか考えてみたいと思います。どれも実際に見られた出来事ばかりです。

 

1.素直な受験生、正直な受験生

 

  ある生徒がその日の授業で出された宿題を忘れてしまいました。とっさに「ノートを忘れました」と話をしてその場を切り抜けようとしましたが、傍目から見ても宿題忘れは明らかでした。この場合、何よりも困るのが、宿題忘れ自体もそうですが、忘れたという事実を後ろ向きにとらえて隠してしまうことです。

 

この事例の延長線上に見られる現象として、例年、特に9月以降の過去問演習で、焦りや不安感から過去問の演習中や、採点時に答案に細工をしてしまうケースが見られます。でも過去問演習で(もちろん日々の演習でも)大切なのは、あくまでも復習するべき箇所を見つけ出すこと。子どもたちには次のように話しました。

 

「目標に到達できなかったのであれば、次回到達するためにどうしたらよいのか、それを考えて先生たちもアドバイスをしたい。だから正直に、素直にみんなのありのままの状態を伝えられるようにいて欲しい」

 

2.やさしい受験生?

 

授業前後や授業中、休み時間、クラスの中で大変盛り上がる瞬間があります。でもよく聞いてみると、お友達のことをあげつらったり、内輪でからかったり、そんな光景が目に入るときがあります。その場で注意することはもちろん、9月以降のことを考えると次のようなお話をしています。

 

「イライラしてしまった時に、人に当たったり、物に当たったりすることはよくある。でもそれで周りのお友達に不快な思いをさせて、気持ちよく勉強できるかな勉強でイライラしてたり、ストレスを感じた時の原因は周りにあるのかな。目標を達成するために大切なのは、自分自身と正直に向き合うことだよね。お友達に気をつかいながら、クラス全体で勉強しやすいような雰囲気をみんなでつくっていこう」

 

  負のエネルギーを前向きな力に変えていけるしなやかな心。そんな子どもたちを育てて行こうと考えています。

 

3.行動を具体化する

 

勉強時間はとっていながらも、なかなか成果が出せない場合があります。面談のときに「毎日2時間はとっているんだけど・・」という返答に「2時間でどの教科をやっているの?」と尋ねると返答に詰まってしまいました。

 

  模擬試験の振り返りシートのコメントと同様ですが、具体的に「何を」「どこまで」やるのかが定まらないと、時間だけが過ぎていってしまいます。可能であれば、週間学習予定表などを作成して、各週ごとに日割りのスケジュールを是非立ててもらいたいと思います。

 

4.まとめ〜精神的な背伸び

 

  今回お話した内容は、12歳の子ども達にとっては少しハードルが高いように思われるかもしれません。しかし、中学受験で求められる学力自体もやや背伸びをした内容であることを考えれば、このハードルを飛び越えてこそ、真の受験生として、そして入学後はやがて後輩となる現5年生以下の憧れへと、子供たち自身が変わっていけるのだと思います。全体に向けた注意と個人面談を繰り返しながら、担当一同子どもたちの意識を盛り上げていきたいと思います。よろしくお願いいたします。