2006年4月29日 女子校アンサンブル説明会報告
青夢舎
学習院大学西5号館で開催された、私立中学による女子校アンサンブルは今年で4回目を迎え、年々参加される方が増えているということです。参加校は五十音順に、跡見、学習院女子、恵泉、香蘭、実践女子、東京女学館、東洋英和、三輪田、山脇の各校。
プログラム内容は、学習院大学文学部心理学科の山本教授による基調講演の後、各校のミニ説明会(各15分)。それと同時並行で、個別相談会および学習相談会が開かれていました。この報告では、各校の学校紹介の中から、特に目についた内容についてご紹介いたします。
(※ なお、各校の末尾にある斜体部分は報告者の主観的なコメント・補足です。)
1.跡見学園
子どもたち一人一人の個性、可能性を開かせるためには、数多くの体験をすることが必要と考えています。そのために、教科の枠組みにとらわれない形で、数多くの体験学習を取りいれています。例えば家庭科で「家屋」について学ぼうと思えば、家屋の歴史にも触れることは必要です。そこで、実際に博物館まで出かけていって、昔の「長屋」と呼ばれる家屋がどのようなつくりだったか、実際に子どもたちに見て触れてもらうわけです。理科においても、校外学習の他に年間で30時間ほどの実験を取り入れており、このような授業の中で実験器具の取り扱い・掃除にいたるまできちんと行える生徒さんたち(本校の卒業生は実験器具をきちんと取り扱えるので、理系学部に進学した場合、非常に驚かれるようです)ができていくのです。
このような体験学習を各教科で、そして各学年で行うことで、結果として卒業後の進路については、自然・人文・社会・芸術そのほかの各分野で偏ることなく、割合としてほぼ4等分されている非常にバランスのとれた選択がなされていると思います。
気のせいか、しばしば、「本校の生活を通じて〜な生徒、〜な子どもたちができあがる」という表現が見られたように覚えています。
2.学習院女子
生徒さんたちには「自律的」な判断ができるよう、普段から接しています。例えば、「本校の生徒としてふさわしくない場所には立ち入らない」という校則にある、「ふさわしくない場所」かどうかを判断するのはそれぞれの生徒さんたちであるわけです。もちろん、その判断が誤りである場合には、教師側からのアドバイスは行いますが、なによりも自律性を養っていきたい。
卒業後の進路は、付属・系列大学への進学者が7割を超えますが、国公立大や難関私大、医歯薬科系大学への進学者も増えており、生徒さんたちの実力は他の進学校と比べても遜色ないのではないかと思います。
本校への出願者の内訳を見ると、A日程・B日程を同時出願される受験生の方が9割を占めており、このような高い評価を頂いていることに大変感謝しております。
3.恵泉女学園
大人である私たちが将来への恐れや不安を抱いているこの時代に、これからの未来を担う子どもたちにどうやったら生きていく希望を持たせてあげられるか、を常に考えながら本校では教育を行っています。
今の小学生たちを見ると、心の奥深い部分にある寂しさや喜び、悲しみ、そういったものを他の人に受け止めてもらえたことがない、閉ざされた心を持ってしまっているように危惧しています。そして大人たちもそのような心にどのように向き合ってあげたらよいか分からないまま来てしまっている。今後、自我が目覚め、思春期といういわば外部に向かっての「殻」を作り上げていく時期に、なんとかこの奥深い心の泉を開かせてあげたいと思うのです。
子どもたちが「自分は自分のままでいいんだ」、「生まれてきてよかったんだ」、そう思えるようにするためにも、この大切な思春期を、様々に試行錯誤しながら生きてもらいたい。思春期はそういった試行錯誤の許される時期なんです。
その試行錯誤の一環として、「本物の」命にふれてもらおう、そう考えて本校では園芸を取り入れています。それぞれの苗には、それぞれ固有のリズムがあり、人間の思うようには育たないし、下手をすれば枯らしてしまうこともある。この園芸という手段を通じて、命の尊さ、個の尊厳といった感覚に目覚めていってもらいたい、そう考えています。
このお話の時に、会場全体がしんと静まり返っていたのが大変印象的でした。この課題を解決するための手段は本当に難しいですね。説明会の終了後に校長先生にこのお話を伺ったとき、先生ご自身も「理想なんですが、、なかなかうまく実現してくれません」と話されていたのも大変心に残りました。
4.香蘭女学校
本校の由来は、明治時代に英国の聖公会宣教師が、日本女性の持つ奥ゆかしさ、優しさというものに深く感銘を受け設立した女学校にあります。
子どもたちに「与えられた命」、「与えられた時間」、「与えられた場所」で精一杯生きてもらいたい、そのためにもやりたいと思ったことには積極的にチャレンジして、自分の好きなもの・好きな場所を是非見つけてもらいたいと考えています。教師もそれを心から応援していきます。
礼拝は1日2回。朝を無事に迎えられたことへの感謝の祈りに始まり、終業時の感謝の祈りで終わります。時には生徒さんたちに、内面をありのままに伝えてもらう「感話」という実践を礼拝時に行ってもらいます。これは「自分は自分のままでいいんだ」、「ありのままの自分をさらけだしていいんだ」、ということを感じ取ってもらうことと同時に、お互い友達同士がどのようなことを考えているのか、ナマの姿を感じ取ってもらいたいという狙いです。
こういった実践を通じて、「私」という個の尊厳が確立されるだけでなく、他者への思いやりが養われ、「私たち」という意識へと発展していくと考えています。
「個の尊厳」というキリスト教倫理と伝統的な価値観がぴったりマッチした「古き良き」学校だなとの印象を受けました。日本女性の「奥ゆかしさ」、「やさしさ」、「従順さ」、このキーワードが「女学校」らしいと思います。
5.実践女子
本校は伝統的に1学年400名程度の大規模校として教育を行ってきました。これはひとえに、大所帯の中で切磋琢磨していくことで、将来、社会というもっと大きな世界に旅立つときの準備をしてもらいたいからです。この大所帯の中で、生徒が生徒を教育する、生徒同士の教育力というのが長い伝統の中でしっかり根付いております。例えば、本校の生徒さんたちは、来校されたお客様や保護者の方によく挨拶をしてくれるという評判なのですが、これも学校側から特に指導をしているわけではなく、子どもたちの間から自然とそういう風土が生まれてきているのです。
現在の校長は、本校卒業生にして県立高校教諭を経て2年前に本校に着任しましたが、「私が40年前に受けた教育がそのまま息づいている」と漏らしておりました。現在は、他大進学率も8割を超えてまいりましたが、この人間教育というベースは、今後も変わらずに引き継いでいこうと考えています。
人気が急上昇している勢いが、そのまま先生の話しぶりにも自信となって表れているな、そう感じさせてくれた学校です。
6.東京女学館
ウーン。。話が聞き取れなくてすみません。創設に関わった幾多の偉人の話が記憶に残っていますが、印象が大変薄くなってしまいました。
7.東洋英和学院
本校のガーネット色の制服には、生徒さんたちは強い愛着をもっております。「敬神」と「奉仕」という建学の理念のもと様々な教育を実践しているわけですが、毎月数回ある「English Day」(この日は、生徒も教職員も会話はすべて英語で行われます)や音楽教育(あちこちの教室にピアノが置かれていて、生徒さんたちは休み時間に自由にこのピアノを演奏しています)が特に大きな特色になると思います。
また、
説明会の冒頭、堀江被告の保釈で敷地のある六本木が大変賑わったことを導入のネタとして話されていましたが、保護者の方の反応が皆無で、少しかわいそうでした(笑)。少し総花的な説明になってしまいもったいなかった印象です。
8.三輪田学園
本校の学年規模は180名程。教師との距離が近すぎず遠すぎず、生徒さんたちにとっても一学年すべての仲間と顔・名前を覚えられる最適な規模だと自負しています。最近、来校した卒業生が「陽だまりのような学校だね」と本校について形容してくれたとき、我が意を得たりと思ったのを大変よく覚えています。
本校では、特に中1国語と中3社会で読書の時間を設けており、その辺も本校の特色かと考えております。
詳しくは、2005年度の学校説明会報告書を参照してください。昨年度の説明会参加者の立場から言わせてもらえば、15分間という短い時間のなかで、十分に三輪田学園の魅力を伝えきれたかというと、少しもったいなかったな、という説明でした。「高い学力と人間教育の充実」では、どこの学校も掲げているのでキャッチフレーズになりません。。
9.山脇学園
本校では中学1年生のときから様々なキャリア教育を進めており、高校1年生からの文理コース別選択授業へと結び付けています。その成果もあり、四年制大学への現役進学率は86%を超え、特に文系学部では91%と、難関大学を狙う積極的浪人生以外はほぼ全員が現役で大学へ進学するといった結果となっております。
中学1年生にはお琴の時間も設けてあり、そういった点は本校の特色なのではないかと考えています。
話を聞いてて、「校長先生、もったいないなー。。」というのが印象です。冒頭に「先生、うちの学校はこんなに楽しいのに何で人気がないの」と生徒さんからつっこまれたという話をされていて、会場の爆笑を誘っていました。多分、笑いのツボは十分に分かっていて、授業なんか面白いと思います。でも肝心の学校のアピールが。。セールスポイントを上手く伝えきれないのを意識されていたのか、当の校長先生も「私の話なんか聞くより、実際に学校を見に来てください」と結んでました。保護者の方を学校見学に足を運ばせるための合同説明会なんだけどな、、我が身を振り返っても宣伝・広報は不得手なので、自分のことのように痛かったです(苦笑)でも、意外とこういう校長先生の方が、「実直さ」が伝わって好評なことも、よくあるんですよね。実際、個別相談会のブースは大変賑わっていました。
全体を振り返って
15分間という持ち時間なので、建学理念やらカリキュラムやら進学実績やらと総花的にするのではなく、いかにうまく学校の特色を伝えられるかが各学校にとってのポイントでした。「同じような説明ばかり」という保護者の方の感想も漏れていた中で、「高い学力」と「人間教育」のどちらかに傾斜を置いた説明をされていた学校は、生徒さんたちのナマの姿をイメージしやすかったですね。