日本の工業や貿易に関する練習問題

1.以下は日本の主な工業地帯・地域による話し合いです。それぞれのA〜Jがどの工業地帯・地域なのか考えて答えなさい。また下線部@〜Gに関する後の問にも答えなさい。

 

――今日は日本を代表する工業地帯、工業地域のみなさんに、日本の工業について思う存分語っていただきましょう。まずはAさん、昔からせんい工業がおさかんだったとお聞きしますが・・?

 

A 「そうなんです。うちは江戸時代から商人たちを中心とした派手な文化が花開いていた地域ですから、織物が色いろつくられていましたよ。みな、着るものにはうるさくて。」

B 「Aさん、その頃には『天下の台所』って呼ばれていましたものね。全国から色いろな品物が集まってきて、華やかな地域だったんですよね。それで、時代が変わってからも@せんい工業を中心に発達したと。」

A 「戦前は『東洋のマンチェスター』と呼ばれていましたよ。でもね、私は日本で最も古い工業地帯と言われていますが、それもCさんのところに官営の模範工場が建てられていたから。私たちはCさんのところから色いろなことを教われたんですよ」

C 「うちは、昔からA養蚕のさかんな所でしたから」

D 「官営工場といえば、僕のところだってB官営の製鉄所の建設がきっかけでしたよ」

E 「Dさんのところは、C石灰石や石炭が近くで採れたうえに、中国から鉄鉱石も輸入しやすかったんだよね」

D 「そうそう!今は石炭も取れなくなって、鉄鉱石とともにオーストラリアから輸入していますが」

E 「製鉄が以前ほどにはさかんでなくなり、おまけに工場用地がどうしても足りなくなって今は伸び悩んでるんだよね。僕もかつては日本最大の工業地帯とか呼ばれていたけれど・・」

F 「じゃじゃ〜ん!E君のところで足りなくなった工業用地を、となりの僕のところで、海を埋め立てたりして確保したんだよね。E君のところからは製鉄やD石油化学なんかの工場が移ってきたんだよ!」

B 「Fさん、とてもお元気ですね!Fさんのところは特に化学工業の割合がとても高いですよね。製鉄は僕のところが全国で最もさかん。E伝統工業の焼き物も全国で最もさかんだし、最近では何といってもE自動車がさかんですよ」

C 「そうですね、1970年代以降、自動車工業が日本中で伸びてきたおかげで私のところも・・」

E 「今は日本で3番目に大きな工業地域だよね。僕のところから移っていった機械工業の工場とかも多いし」

 

――自動車工業がさかんになったということですが、何か理由があったのでしょうか

 

G 「みんな・・・よくしゃべるね」

F 「おっとG君!やっと重い口を開いたね。自動車工業がさかんになった理由ってなんだい?」

G 「僕のところを通る東名高速道路が開通するなど、全国各地で高速道路が建設されていって自動車が売れるようになったのが1960年代以降。でもそれ以上に、1970年代の石油危機の影響が大きかったんだ。日本の自動車は燃費がよいのでガソリンをあまり必要としないからね。それでアメリカを中心に海外での人気が高まってきたんだ」

F 「G君のところはB君とE君にはさまれていたけれど、工業地域として発展するのは新幹線や高速道路が開通し始めてからなのかな」

B 「GさんのところでつくられているFオートバイも、清水港を通じて世界中に輸出されているんですよね。交通の便がよくなってから、工業地域として発展してきましたね」

H 「特に1980年代に入ってからは、世界中に日本製の自動車が輸出されたんですよね」

D 「Hさんのところも、僕のところとAさんのところにはさまれていますよね」

H 「もともと島や入り江が多くて、軍港が発達していたのに加えて、雨の少ない土地だから塩田があちこちにあったんです。戦後はこれらの土地が、あっという間に工業用地に変わっていって・・」

F 「僕ほどではないけれど、G化学工業の割合が高いんだよね!あとせんい工業もさかんだっけ?」

H 「今治でタオルなんかをつくっています。あと自動車をつくっている都市もいくつかありますよ」

 

――その他、本日発言されていない工業地域の方はいらっしゃいますか

 

I 「私のいるところは、黒部川の急流に水力発電所があったり、古くからの伝統工業がさかんだったり」

J 「あなたのところの薬売りは、江戸時代から全国で有名でしたものね」

I 「他にも刃物とか洋食器とか・・」

J 「うちは、他に産業もなく交通の便も悪かったので、砂浜海岸を思い切って掘り込んで港にして、石油化学や製鉄の工場に来てもらうことにしました」

 

問1 下線部@について、Aの地域でせんい工業がさかんな都市として不適切なものを以下から選びなさい

 ア 泉佐野  イ 貝塚  ウ 門真  エ 岸和田

 

問2 下線部A、養蚕で取れた糸をもとにして織る織物は何織物ですか

 

問3 下線部Bの製鉄所の名前を答えなさい

 

問4 下線部Cの石灰石はどこの都道府県で採れますか。また石灰石を原料としてつくられる製品(鉄以外)として適切なものを以下から選びなさい

 ア コップ  イ 茶わん  ウ アスファルト  エ セメント

 

問5 下線部D、Fの地域の石油化学工業がさかんな都市として適切なものを以下から選びなさい。

 ア 野田  イ 君津  ウ 千葉  エ 市原

 

問6 下線部E、Bの地域で作られている焼き物として不適切なものを以下から選びなさい

 ア 瀬戸焼  イ 有田焼  ウ 常滑焼  エ 多治見焼

 

問7 下線部Fのオートバイが生産されている都市として適切なものを以下から選びなさい。

 ア 富士  イ 富士宮  ウ 焼津  エ 浜松

 

問8 下線部G、Hの地域で石油化学工業がさかんな都市として倉敷があります。倉敷にある有名な石油化学コンビナートを答えなさい。また倉敷以外で石油化学工業がさかんな都市として適切なものを以下から選びなさい。

 ア 福山  イ 広島  ウ 周南  エ 宇部

 

2.日本の伝統工芸品に関する以下の問に答えなさい

 

問1 次の1〜9の説明文に当てはまる伝統工芸品を答えなさい。

1.近畿地方の代表的な織物として知られるこの伝統工芸品の由来は、応仁の乱にまでさかのぼります。

2.最上川の流域でつくられるこの伝統工芸品は、一組40個の駒からできています。

3.九州北部でつくられるこの伝統工芸品は、ところどころかすれたような色合いになっていることから、名前がつけられました。

4.この焼き物は石川県南部でつくられており、その起源は江戸時代初めとされています。

5.広島県で作られるこの伝統工芸品は、ヤギ、馬、鹿、タヌキなどの毛が材料となっています。

6.北上川の中流域でつくられるこの伝統工芸品は、この地域が古くから鉄の産地だったために発達しました。

7.能登半島北部の伝統工芸品ですが、2007年の中越沖地震で多くの工房が被害を受けました。

8.近畿地方の中部で作られているこの焼き物は、独特のタヌキの置物で知られています。

9.中部地方北部で作られるこの織物は、雪にさらして最後の仕上げをする独特の工程で知られています。

 

問2.以下に挙げた日本の各地方について、その地方の伝統工芸品として不適切なものを選びなさい。

1.北海道・東北地方

ア.水晶細工  イ.鳴子のこけし  ウ.津軽ぬり  エ.曲げわっぱ  オ.会津ぬり

2.関東地方

ア.結城つむぎ  イ.江戸木目込み人形  ウ.伊勢崎がすり  エ.大島つむぎ  オ.益子焼

3.中部地方

ア.洋食器  イ.羽二重  ウ.加賀友禅  エ.桐生織  オ.飛騨春慶ぬり

4.近畿地方

ア.京人形  イ.唐津焼  ウ.京友禅  エ.清水焼  オ.奈良筆

5.中国四国地方

ア.丸亀うちわ  イ.萩焼  ウ.土佐和紙  エ.備前焼  オ.丹後ちりめん

6.九州地方

ア.伊万里焼  イ.博多人形  ウ.琉球紅型  エ.アツシ織  オ.日田げた

 

3.以下は日本の経済と貿易の課題についてまとめたものです。これを読んで後の問に答えなさい。

 

 日本の経済は海外への輸出を中心にして成長してきました。それは、天然資源の種類は豊富なものの産出量の少ない島国にとっては必然の選択だったのかもしれません。というのは、製品をつくるためには外国から@原料となる鉱物A工場・機械を動かすための燃料を輸入しなければなりませんが、ただ輸入し続けるだけでは、原料を購入するためのお金をまかなうことができません。そこで、国内の工場で加工した製品を今度は海外へと輸出することで、外国との取り引きに用いる( 1 )(=アメリカで用いられる通貨)などのお金を稼いでいたというわけです。

 

 とはいえ、あまりに日本側の輸出ばかりが増えすぎると、輸出先の国の産業を衰えさせ、相手国に失業者が続出しかねないという課題もあります。( 2 )と呼ばれるこのような課題に対し、日本企業は様々な対策をとってきました。鉄鋼や造船の工場では自主的に相手国への輸出を規制してきましたし、自動車の工場は、主な輸出先であるアメリカやその隣の国であるカナダ、メキシコ、あるいはヨーロッパ各国などに自社の工場を移転し、( 3 )を行うなどしてきました。それでも日本側の貿易黒字がなかなか減らないということで、近年では、日本がB農産物を中心に輸入を自由化することをほかの国々は求めています。消費者にとっては、安い外国産の農産物が手軽に買えるようになるという利点もありますが、C食品の安全性の問題や、国内の農家をどのように保護していくのかといった課題もあり、日本と諸外国との交渉は難航しています。輸入に頼りすぎると、輸入元のD外国で自然災害や戦争などが発生した場合に、日本は食糧を確保できるのかといった心配も生じてくるかもしれません。

 

 また、日本の工場が( 3 )を進めすぎると、今度は日本国内の工場が次々と海外へ移転することになりかねず、その結果として今度は日本国内の失業者が増えかねないという心配もあります。このような事態をE「産業の空洞化」と呼びますが、実は、産業の空洞化が進む要因はもう1つあります。日本が輸出を中心に経済発展をとげてきたことを見習って、1980年代ころから、日本の後を追いかけて工業化と海外への輸出促進を進める国々や地域が、東アジアや東南アジアの国々を中心に増えてきたということです。当時、「NIES(新興工業経済地域)」と呼ばれた、F韓国、台湾、香港、シンガポール、タイなどの国々は、日本に比べると労働者の賃金が比較的安く、海外向けの製品も安く輸出できるというメリットを持っていました。そこで、日本の企業もこれらの国々の企業との競争に勝つために、積極的に現地へ工場を移転させていったのです。

 

 近年、日本では部品などを中心にした( 4 )の輸入が増えていますが、その背景には、実はこうした国々(最近ではG中国も工業力を大幅に高めていますね)の出現があげられます。単純な工業製品の輸出では、これらアジア諸国との価格競争にはかなわない。そこで、日本国内では、海外で安く製造した部品類を組み立てることでさらに高度な技術力を必要とする製品を生産しようという動きが広まってきたのです。21世紀に入り、景気の回復してきた日本のメーカー各社は、海外での工場建設だけでなく国内にも最新の工場を建設しようという動きを強めています。それは、産業の空洞化が進みすぎると、日本国内の技術力が衰えるだけでなく、国外への高度な技術の流出もまねきかねない、海外への輸出を重視してきた日本企業の死活にかかわりかねないという危機感がもたらしたものです。

 

 諸外国との貿易は島国日本の経済にとって欠かすことのできない重要な要素となっています。貿易の国際的なルールづくりについては( 5 )という機関で話し合いが行われていますが、外国からの製品の輸入が増えるということは、その国の産業のしくみに大きな影響を与えかねないということは、すでに各国で生じている貿易摩擦の経験からも明らかです。諸外国との間で天然資源、工業製品、農産物などをどのようにやりとりしていけばよいのか、政府も、企業も、そして私たち消費者も考えていかなければいけません。

 

問1 空欄( 1 )〜( 5 )に適切な語句を記入しなさい。

 

問2 以下は主な天然資源・農産物の輸入先をまとめた表です。この表に当てはまる資源としてふさわしい組み合わせを、後のT〜Wから選びなさい。

天然資源名

主な輸入先

( A )

カナダ、アメリカ、ロシア

( B )

サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール

( C )

オーストラリア、ブラジル、インド

( D )

アメリカ、オーストラリア、中国

T A−小麦  B−原油    C−石炭   D−魚介類

U A−木材  B−天然ガス  C−鉄鉱石  D−小麦

V A−大豆  B−天然ガス  C−石炭   D−肉類  

W A−木材  B−原油    C−鉄鉱石  D−肉類

 

問3 日本の工場、機械を動かすためには燃料や燃料をもとにしてつくる電力が必要ですが

 (1)日本の火力発電、水力発電、原子力発電の発電割合を示した数字として適切なものを、後のT〜Wから選びなさい。

T 火力−50%  水力−30%  原子力−10%

U 火力−80%  水力−10%  原子力−10%

V 火力−70%  水力−20%  原子力−10%  

W 火力−50%  水力−10%  原子力−30%

(2)日本の火力発電の燃料は主に石炭や石油が使われています。原油を輸入先の地域から運ぶための専用の船を何と呼びますか。

 

問4 農産物の輸入自由化について

 (1)1991年にある果物の輸入が自由化された影響で、日本国内では別の果物の生産量が急激に減少しました。その果物の主な生産県としてふさわしくないものを以下から選びなさい。

   ア 静岡  イ 愛媛  ウ 青森  エ 和歌山

 (2)1995年には別の農産物の輸入が開始され、1999年に輸入数量の制限を取り払い、関税化されました。その農産物の生産地として不適切な地域を以下のア〜エから選びなさい。また、その農産物を日本が最も多く輸入している国を以下のオ〜クから選びなさい。

   ア 甲府盆地  イ 石狩平野     ウ 庄内平野  エ 筑紫平野  

オ 中国    カ アメリカ合衆国  キ タイ    ク ベトナム

 

問5 2005年にはアメリカで発生したある病気のために牛肉の輸入が停止されました。その病気の名前をアルファベット3文字で答えなさい。

 

問6 オーストラリアで発生した大干ばつのため、ある農作物の国際価格が急上昇し、日本でもパン類やめん類などの製品の値上げが相次いでいます。この農作物とは何ですか。

   また、この農作物の主な生産都道府県の組み合わせとして適切なものを以下から選びなさい。

T 1位−鹿児島  2位−宮崎  3位−群馬

U 1位−北海道  2位−新潟  3位−秋田

V 1位−鹿児島  2位−茨城  3位−千葉

W 1位−北海道  2位−福岡  3位−佐賀

 

 

問7 産業の空洞化について、特に自動車工場が海外に移転することは、その工場のある地方に与える影響が大きいといわれます。その理由を「部品」、「関連工場」という語句を用いて説明しなさい。

 

問8 日本が輸入する工業製品のうち、韓国が輸入先の第1位となっているものを以下から選びなさい。

  ア 航空機  イ 衣類  ウ 鉄鋼  エ 自動車

 

問9 2007年、中国は日本にとって最大の貿易相手国(貿易総額)となりましたが、それまで日本にとって最大の貿易相手国だった国はどこですか。

 

(解答欄)

 

1.

A         B         C         D         E

 

F         G         H         I         J

 

問1     問2          問3          問4 産地:         製品:

 

問5     問6     問7     問8 コンビナート名:          都市:

 

 

2.

問1 1         2         3         4         5

 

6         7         8         9         10

 

問2 1          3     4     5     6

 

 

3.

問1 1)        2)        3)        4)        5)

 

問2     問3(1)     (2)         

 

問4(1)     (2)生産地:     輸入先:     問5

 

問6 農作物名:         生産地:                                                

 

問7

 

問8     問9

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答:

 

1.

A)阪神工業地帯 B)中京工業地帯 C)関東内陸工業地域 D)北九州工業地帯  E)京浜工業地帯

F)京葉工業地域 G)東海工業地域 H)瀬戸内工業地域 I)北陸工業地域 J)鹿島臨海工業地域

 

問1 ウ(電気機械) 問2 絹織物  問3 八幡製鉄所  問4 産地:山口県  製品:エ

 

問5 エ  問6 イ  問7 エ  問8 コンビナート名:水島コンビナート  都市:ウ

 

 

2.

問1 1)西陣織 2)将棋の駒 3)久留米がすり 4)九谷焼 5)熊野筆 6)南部鉄器 7)輪島ぬり

)信楽焼 9)小千谷ちぢみ

 

問2 1)ア(山梨県) 2)エ(鹿児島県) 3)エ(群馬県) 4)イ(佐賀県) 5)オ(京都府) 

6)エ(北海道)

 

 

3.

問1(1)ドル (2)貿易摩擦 (3)現地生産 (4)機械類 (5)世界貿易機関(WTO)  問2 W

 

問3(1)U (2)タンカー  問4(1)ウ (2)生産地:ア 輸入先:カ  問5 BSE  

 

問6 農産物:小麦  生産地:W  問7 自動車は部品の数が多いので、関連工場も多くなるから  

 

問8 ウ  問9 アメリカ合衆国