2013年4月25日 夢限大 私立中高合同説明会 参加報告
青夢舎
以下は、大井町きゅりあんで開催された、「夢限大」という名の合同説明会に関する雑感です。今年は例年よりも開催時期が2週間ほど早かったのですが、ここ数年間の中ではもっとも人手が多かったのではないでしょうか。
説明会のメイン企画も、今までのパネルディスカッションから、説明会に参加している各学校の5分間スピーチに変更となり、少し今までとは違った雰囲気の説明会となりました。
各校5分間という非常に限られた時間の中で、先生方がお話される内容を事前にちゃんと絞り込んでいらっしゃるなということを強く感じました。またそのことで、子ども達がどのような様子で学校に通っているのか、具体的なイメージがわきやすく、個別ブースでもっとお話をお伺いしたいと思うような場面が多数ありました。
自分探しをする思春期の6年間。将来の大学進学に向けた準備はもちろん大切な要素ですが、そのためにもまずはしっかりと自分を見つめていけるだけの土台を築いていくこと。そのための関わり合い、見守りあいを先生方が様々に工夫されている、そのバックボーンを支えるのは長年培ってきた伝統や校風とその解釈、掘り下げなのだなということを改めて強く感じました。
このレポートは、各校の5分間スピーチの内容をまとめて、それぞれに簡単なコメントを付け加えたもののうち、女子校について五十音順に並べてみました。
(なお、本報告に登場する学校のうちのいくつかの学校は、過去の夢限大説明会に参加されていたり、女子校アンサンブルなどに参加されたりしていて、その折の僕の報告がWeb掲載されている場合があります。詳しくは以下のURLをご参照ください)
http://www.h3.dion.ne.jp/~deepblue/edu/school-data.htm
<女子校編>
◎小野学園
本校は幼稚園から高校までそろっている総合学園です。女性の生き方にはたくさんの選択肢があります。家庭に入ってお家のことを守る生き方もあれば、ばりばりとお仕事をする生き方もあるでしょう。どのような選択肢を選んだとしても賢く生きることのできる「どっちもできる」女性の育成を本校は目指しています
そのために小野学園が力を注いでいるのは理数教育です。観察力、探求力、論理力を身につけさせたいと考えています。現在高知大学や東京農業大学と連携して、より高度な実験に取り組ませるサイエンスパートナーシッププログラムを実施しています。本校は体験型の学習を多く用意しています。
(※ ビオトープを利用したホタルの育成実験では、遺伝子レベルにまで踏み込んだかなり高度な内容にも取り組んでいるようです。以前に参加させて頂いた説明会で、「同じ敷地内に小さな子たちが大勢いることもあって、小野学園の生徒達はやさしい子がとても多い」と話されていたことがとても印象に残っています。 )
◎麹町学園
麹町学園は交通の便もよく皇居まで歩いていける、けれども静かな文教地区に位置しています。
本校では学級担任2人制を採用しておりきめ細やかに生徒を見られるよう取り組んでいます。中1中2の基礎期のクラスでは、男女/若手ベテランの組み合わせでペアを組み、1日が終わるとその日の子ども達のささいな変化も担任間で話し合い、翌日の指導に活かせるようにしています。
また「未来化プログラム」ということでいわゆるキャリア教育も行っています。これは、四年生大学進学を見据えて、まず将来つきたい職業選択をしてみる。そのためにどのような大学を選んだらよいか、そして中学高校でどう勉強に取り組んだらよいかということのイメージがわくようにしようということです。卒業生に来校してもらい、具体的に職場での体験談などについての話を聞かせてもらっています
( ※ どこの中学校でも、キャリア教育のお話はすっかり定着した感じがあります。将来の職業選択についてどのように具体化していけばよいのか。ぴんと来ない生徒も少なくないと思います。それをしっかりと具体像の描けるものにするためには?卒業生の方のお話や職場訪問だけではなく、より身近な先生方やご家庭での様々なやり取りの中に、子ども達が夢を描ける手がかりがあるのかもしれないと思いました。2人担任制というきめの細かいサポート体制で、多分そんなお話もされているのではないでしょうか )
◎玉川聖学院
本校は自由が丘(自由が丘駅徒歩6−7分。九品仏駅徒歩3分)にあるミッション校です。今までの学院長は代々外国の方でしたが、今年の4月より初めて日本人女性の方を学院長としてお迎えしました。
女子だけの中で自分のことを出せる安心感というのが女子校にはあると思います。本校はミッションスクールとしてのキリスト教の教えを前面に押し出しており、一日を朝の礼拝で始め、帰りの礼拝で終えるという生活を送っております。そのような生活を通じて、子ども達は「かけがえのない私」を発見します。あなたのことは大事ですから、あなたの隣にいるお友達も大事ですね。そして「違っているから素晴らしい」ということに気づきます。誰かと自分とを比較するのではなく、ありのままの自分でいいのだということです。そして最後に「自分の使命」、つまり自分の命の使い方に気付いて欲しいと思います。
( ※ 一人ひとりが大切な生命。ありのままの自分でいていいのだ。という自己肯定感を思春期の女の子に感じさせてあげることは、ミッション系であるかないかを問わず、女子校に共通する教育理念、教育課題となっているように感じます。 )
◎千代田女子学園
本校は「思いやり」と「感謝」の心の教育を一貫して掲げており、宗教と国際理解教育に注力しています。本校の教育理念は「叡智」「品性」「真実」の3つです。
国際理解ということで英語教育に力を入れています。それはただ単に英語を言葉として話せるというだけでなく、人前でその語学力を活かしていける力を身につけさせたいということです。
本校は、武蔵野女子大学の系列校であり、内部進学を志す生徒には文系理系医療系様々な学部への選択肢がありますが、どんな学部を選択しても、希望する学部で勉強していけるような基礎学力を身につけさせたいと考えています。
( ※ 言うまでもないことですが、やはり語学力があるというのは、将来どのような職についたとしても、それだけ活躍の場の可能性を広げてくれるものだと思います。一見、将来自分が希望している職業選択を考えたら、英語とその職行とは何も関係がないように思えるかもしれない。けれども、英語を自在に使えることでそこに新しい可能性を見出せること、が、もしかしたら「人前で活かせる」ということの意味なのかもしれないなと思いました。 )
◎東京女子学園
港区にある本校へは様々なルート(JR線、都営三田線、都営大江戸線、都営浅草線)で通うことができます、最寄り駅が複数あるため、東急線や京急線沿線の方は乗り換えなしで本校に通うことができます。
本校の理念は「生徒は未来からの留学生」ということです。過去を変えることはできないけれど、自分の未来は変えていくことができる。本校では次の3つの柱を掲げて教育に当たっています。キャリア教育、国際理解・英語教育、進路指導です。
( ※ 短い時間の中では詳しく紹介しきれないお話ばかりだろうなと思いましたが、何か一つ詳しいお話をお伺いできたらよかったなと思いました )
◎トキワ松学園
本校は都立大駅徒歩8分のところにあります。英語の授業は中1では週6時間(そのうち2時間はリスニング&スピーキング)行っています。低学年のうちは歌や英単語ビンゴゲームなどで楽しみながら授業を行うことをモットーにしています。そのようにして始めた英語であっても、学習が進めば中3でイギリスでのホームステイ、高1でワシントンの海外プログラム、高2でオーストラリアの3ヶ月間短期留学と3回の海外留学を行う機会を得られるほどに上達します。
また社会科では3分間スピーチというのを行っており、これは自分の発表したい内容について事前に下調べをしっかり行わなければならないのは当然のことですが、スピーチが終わってから、同級生たちからフィードバックされるコメントの束を通じて、世の中には様々なものの見方、多様な目が存在するということを実感する機会になっています。
( ※ どんなことでも、はじめは取り組みやすいよう工夫をしながら、軌道に乗ればやがて大きな実を結ぶのだ。そんなことを考えながらお話を聞いていました。初学から始めて、海外留学の機会が3回ある、場合によっては数ヶ月の長期にわたるというのは、そうあることではないと思います)
◎富士見
本校は練馬区の中村橋にある学校です。私立中学に入学してくる女の子は、入学に当たって勉強以上に友達作りが不安で仕方ありません。そこで本校では入学式の翌日からすぐに4日間のオリエンテーションを実施し、その中で友達作りのための様々なアクティビティを実施しています(以前は宿泊をともなう形式でしたが、少し子ども達には負担かなと考え、数年前からお家から通学する形で行うことにしました)。最初は言葉を全く使わない。身振り手振りだけで行うアクティビティ(例えば誕生日順に並びなさいなど)からスタートし、だんだんと言葉を使うアクティビティへと移行することで、子ども達の心もほぐれてきます。またそれだけでは十分ではないと思いますので、3日に1回は席替えを行うようにもしています。それくらいしてあげると、友達作りへの不安も取り除かれていくようです。
本校の教育目標は6年間で学力・人間力を含めた未来を切り開く力を身につけさせることです。今は昔とは違い、先の見えないレールのない時代です。いまだに男性社会の強く残っているような状況でも、女性が活躍できるだけの力を身につけさせたいと考えています。
本校の進学実績は、数年前に特進コースを廃止してから上昇しています。学年の中に変な壁のようなものがなくなり、全体として盛り上がるようになったためではないかと思います。通塾率に関しても、現在の高3生で4割(数年前までは通塾率8割)にまで低下させました。早慶といった学校に進学していった生徒でもやはり塾に通っていた子は半分よりも少なくなりました。本校では学校で全てが完結することを重視しています。
( ※ 確か8年前に学校で行われた説明会にお伺いした時が、合宿形式での友達作りオリエンテーションがはじまった年でした。その頃から、先生方が試行錯誤されながら、堅実に進学実績を出し続けている学校だなという印象がありましたが、この数年でその試行錯誤が実り始めたのでしょう。大学入試問題への研究もかなり進んでいて、それを踏まえて入試対策講座を整備されているようです。学年全体で盛り上がれるから、受験勉強も一緒になって乗り切れる、というのは一つの大切なキーワードなのかもしれないなと思いました )
◎普連土学園
本校はキリスト教のフレンド派の教えに基づく学校です。フレンド派の教えというのは、全ての人には神様から与えられた素晴らしい可能性があるということです。その可能性のことを私達は「神の種」とか「内なる光」といった言葉で表現しますが、誰もがこの内なる光を持っているということは、つまり誰もが神様の前では平等であるということです。したがって、普連土学園の教室には教壇がありません。
フレンド派の学校というのは日本には1校だけしかありませんが、世界中にはたくさんのフレンド派の学校が建てられていて、アメリカのオバマ大統領のお子さんも、この学校に通っていました。またフレンド派の人々の活動はノーベル平和賞を受賞したこともありますし、今の天皇陛下がまだ皇太子だった時代の家庭教師役は、本校の4代目校長を務めた女性教師でした。
以前に他校の校長先生から、学内に備え付けの食堂を上級生が占有してしまっていて、中学1年生たちはなかなか使うことができないというお話をお伺いしたことがあります。そこでその話を本校の高校3年生にして、もし本校に学食が存在したらどうなるだろうかと尋ねたことがあります。すると彼女達は「私達だったら中1生の専用の席を真っ先に作ろうと思う」と答えました。そんな温かな雰囲気の学校です。
( ※ 比較的小規模な、そしてアットホームな学校だなという印象があります。卒業生のアンケートでは、学校の印象を「陽だまりのような場所」とか「温室」などと形容していた生徒が多数いたそうで、子ども達にとって居心地の良い空間なのだろうなと思います。フレンド派は信徒の方同士の会話を大切にしている宗派だそうで、そのこともあって、学校内は常に会話が絶えない。説明会でも本当によく先生方がお話されていたな、お話の好きな先生が多いなと感じたのを覚えています。 )
◎三輪田学園
三輪田学園に通う子ども達ってどんな子ども達かとよく問われますが、普通の気さくな女の子達です。ですが、本校に通う生徒に関して言えば、これは昔から少しも変わっていないように思います。中学受験を考えていらっしゃるご家庭には、10年後、20年後のお子様の生き方を考えて学校選びをしていただけたらと思います。
本校は、中高6年間の間に、女性としての行き方を考えられる力を身につけさせるプロフェッショナルとして、の女子教育の伝統を長らく実践してきた学校です。さきほどから何回か話題に上がっていますが、女の子の物事の理解の仕方は、小さなことを積み上げて全体を理解していくのに対し、男の子の場合は、全体を大づかみにして、細かなことをつめていくような傾向があります。このような思春期の男の子女の子の性差に基づいて、女子教育を行っている学校、それが三輪田学園です。
( ※ ここ何年間か、三輪田学園の先生方は各所の学校説明会で、女子教育のプロフェッショナルという言葉をよく使われ、その発達過程における性差、思春期の女の子の特徴についてお話をされています。もともと読書教育ですとか、道徳教育に関して定評のある三輪田学園という印象なのですが、近年は子ども達への関わり方をより実証的なものに洗練させていっているように感じています。
三輪田学園については、女子校アンサンブルという合同説明会での報告の中でも例年取り上げておりますので、そちらもあわせてご参照ください )
◎八雲学園
都立大学駅から徒歩7〜8分のところにある八雲学園です。本校の教育の柱は4本ありまして、チューター制、芸術鑑賞、英語教育(これは最も大きな柱です)、そして進学指導です。今春の進学実績は過去最高を記録しました。来春も楽しみにしています。中1クラスには現在高校3年生が4人ずつ各組にお世話係としてついており、後輩達の面倒を見ています。5月からチューターに引き継ぐことになっています。
( ※時間の少ない中で手際よくお話をまとめられた感じがあります。八雲学園のチューター制度や英語教育については、2009年の夢限大説明会の報告書でも取り上げておりますので、そちらもご参照ください )