2013年4月29日 女子校アンサンブル説明会報告

青夢舎

 

学習院女子大学で開催された、私立中学による女子校アンサンブルは今年で11回目になります。例年通り参加校は9校で、五十音順に、跡見学園、学習院女子、恵泉女学園、香蘭女学校、実践女子学園、東京女学館、東洋英和女学院、三輪田学園、山脇学園の各校です。

プログラム内容は、各校のミニ説明会(各15分×計3回)。それと同時並行で、個別相談会および学習相談会や基調講演会が開かれていました。この報告では、各校のミニ説明会の中から、特に目についた内容についてご紹介いたします。

(※ ホームページに掲載しています、2006年、2007年、2009、2012年の説明会報告もあわせてお読みいただけると、各学校の姿がより詳しくわかるかもしれません)

 

1.跡見学園

 

今回は本校の創立者である跡見花蹊先生と本校の教育理念についてお話しさせていただければと思います。

 

跡見花蹊は大阪にあります木津村というところの郷士の家に次女として生まれました。跡見家は代々木津村の郷士ということで名主などもつとめていた、また姉小路家という公卿の執事のような役目もつとめていた勤皇の家系なのですが、花蹊が生まれたことには没落してしまい生活は苦しかったようです。そこで彼女は12歳の時から絵の勉強を始め、17歳になるとに単身京都に留学して19歳まで暮らし、絵の勉強に加えて、漢学(四書五経などの漢籍)を学びました。当時、女性が学ぶ学問といえば和学(和歌など)が一般的で、漢学は男性が学ぶべきものとされていました。しかし花蹊は、貧困にあえぐ跡見家を何とか立て直したい、その思いもあって宮原節庵という人に師事して学問にはげんだわけです。

そして19歳になった時に大阪にもどり、父とともに私塾を開きます。この年、江戸では福沢諭吉が後の慶応義塾の母体となる塾を開いています。跡見学園は現在ある私学の中では最古の学園ということができます。その後、花蹊は明治維新の激動期である1870年に東京に移住し、引き続き塾を開きます。維新の頃の東京には新政府の設立に伴い多くの人々が地方から移住してきましたが、そこにはそんな人々の子弟も含まれておりましたた。花蹊はそこで地方から上京してきた女性たちの教養の低さを目の当たりにして、女子教育の必要性を痛感したのです。それまで開いていた私塾という形から、学校としての跡見学園が開設されたのは1875年のことになります。

それでは花蹊はどのような教育を目指したのか。跡見学園の教育理念は「目と手と心」です。物事の真善美を見分ける「目」と、情報発信のツールである「手」。そして、それらを司る「心」、人となりのことです。これらを兼ね備えた女性を育てることで、日本の新しい国づくりを支えようというのが花蹊先生の目指す教育でした。これを現代風に言い換えるなら、情報をインプットし、またアウトプットできる能力と、それをコントロールできる心の育成となるでしょう。跡見学園ではそのような教育を目指しています。

 

 

4.学習院女子

 

皆さんの中に女子校というのはどのようなイメージでいらっしゃるでしょうか。女子校というのは、本音で友達と付き合えてホッとする、また伸び伸びと過ごすことができる、生涯の友達を得ることのできる空間なのではないかと思います。このことは卒業後により深く実感してくることだと思います。

 

では学習院女子はどのような女子校なのか。よくお寄せ頂くいくつかのご質問に答える形でお話ししようと思います。

まず、学習院女子って伝統のある学校だから敷居が高かったりしませんかとよく聞かれます。確かに本校は明治18年創設の華族女学校が前身という伝統のある学校ですが、戦後は一私学として出発しましたし、特に伝統校としての敷居の高さのようなものはないのではないかと考えています。本校のあいさつは「ごきげんよう」で交わされるという伝統はありますが、そのような伝統を大切にしつつも、むしろ新しいこと(帰国生入試ですとか、海外留学、キャリア教育など)には昔から積極的に挑戦してきた学校と考えています。

また、本校は付属校ではありますが、勉強はしっかりとさせております。基礎知識の土台の上に自分でものを考え表現できる力を身につけさせたいと考えております。中学1年生では一週間のうちの1/3は分割授業を行っていますし、英語はどの学年でも分割授業を行っています。また実験や実習を取り入れている授業も多く、英語によるスピーチ、社会科でのグループ発表など自己表現の力を磨く機会もたくさんあります。学期末の本校の職員室は、生徒たちのノートの山で各教科ともいっぱいになっています。定期テストの点数だけでなく、日ごろどのようなノートを取って授業を受けているのか、ということまで含めて成績評価をつけています。

現在の内部進学率は7割で、それ以外は他大学へと進学していきます。最近では医学部系への進学者も増えています。ただし、他大学への一般入試を受験する生徒には学習院大学ないしは学習院女子大学への内部推薦は取り消させていただいています(※ 年末までに結果の出るような推薦入試やAO入試であれば、再度内部推薦を行うことも可能)。

よく、本校にはおとなしいお子さんが多いのではないかというような質問もいただくのですが、実は生徒たちに一番好きな科目は何かという質問を行うと全学年とも体育が一番人気のある科目なんです。学校行事の中で一番盛り上がるものは学年別対抗の運動会で、優勝した学年は毎年涙を流して喜んでいます。また運動部の活動もさかんで、おとなしいお子さんの集まる学校というわけではないと思います。

本校には11万冊の蔵書数を備えた図書館もありますし、そこは本好きのおとなしいお子さんにはたまらない場所だと思います。つまりどんなお子さんにも居場所のある学校だと考えています。

もちろん、活発なお子さんばかりだと礼儀作法はどうなっているのか、とご心配される方もいらっしゃるかとは思いますが、中学1年生には作法の授業もあります。ただ、品性というのは形に現れるのではなく、その人の内面から現れるものなのではないかと私たちは考えています。

活発なお子さんも、おとなしいお子さんもそれぞれの居場所を大切にしつつ、中高の六年間を通じて、生徒たちの挑戦しようという心を大切にして、見守っていきたいと考えています。

 

 

5.恵泉女学園

 

恵泉が目指しているのは戦争をなくし平和に貢献できる女性の育成です。髪と人に使え、自然をいつくしみ、世界の平和に役立てる、そんな女性を育てることが恵泉の目標です。

そのためにはどうしたらよいか。まず恵泉には制服がありません。制服は子ども達一人ひとりの個性を封じ込める仮面だと考えています。そうではなく、「ありのままのあなたであって良いのですよ」というのが、恵泉に入学してくる子ども達への学校からの最初のメッセージです。私たちは生徒一人ひとりが神様の作品であると考えています。他の学校ですと、「この学校の制服に恥じぬ生活を送りなさい」と教えるかもしれませんが、「あなたの心に恥じぬ生活を送りなさい」というのが私たちの願いです。

この自然は多種多様な個性が不思議な調和を奏でています。校舎の屋上にあるビオトープには実に様々な木々が生い茂っている。恵泉もそのようなものを大切にしていきたいと考えています。聖書、国際、園芸は恵泉の教育の3つの基本精神をなすものです。

恵泉ではあれをしなさい、これをしなさいということはしません。「あなたはどう思う?」という生き方を問う、内面を見つめる教育を行っています。そのために大切にしているのが朝の礼拝の時間です。学校が提示する一つの人生の指針としてキリスト教は存在しています。礼拝の時間では、生徒一人ひとりが感話を行う機会があります。自分が日ごろ何を感じているのか、考えているのかを表現することで、自分らしくあっていいんだという自己肯定間、安心感を養っていきます。その積み重ねの中から自分のやりたいことを子ども達は見つけていくのだと思います。

なかなか目に見える形ですぐに結果が現れるものではありませんが、子ども達が自分の人生を生きていくうえで大切な土台を耕す教育を恵泉は行っている、そのように私たちは確信しています。

 

 

6.香蘭女学校

 

本校は、英国聖公会の宣教師が「キリスト教の教えと日本女性らしい繊細さ、優しさをあわせ持つ女性」を育てられたらどんなに素敵なことかと考え、設立されました。香蘭の一日は朝の礼拝から始まります。新しい一日が神様のお守りによって加えられたことへの感謝を通じて、一人ひとりの生命を大切にする心が養われます。

香蘭では「私」ではなく「私たち」を大切にしています。お祈りを通じて誰かに心を寄せていく生き方。また色々な人々に支えられて不安を乗り越え、部活動や学校行事などの様々な目標を達成していくプロセスをとても大事に考えています。

 

 

7.実践女子学園

 

本校が目指しているのは堅実にして質素、品格ある女性の育成です。近代国家建設のために自立した、自分の意見を持ち自ら行動できる女性、また子どもの教育を担える女性を育てることの必要性を痛感した創立者が実践女子学園を設立しました。現在ではキャリア教育、感性表現、国際理解の3本柱に学力を加えた「3プラス1」が本校の教育目標です。

子ども達が他者とどのように関わり、比較をし、互いを認め合っていければよいのか。そのためには何よりも自分に自信を持つことが出発点になります。実践女子学園では、生徒たちに自信を持たせるための様々なプログラムを用意し、子ども達が学力だけでなく「他者と関わる力」を身につける6年間となることを目指しています。

 

 

8.東京女学館

 

 東京女学館の建学の理念は世界に通用する女子教育を行うこと、「国際性」、「知性」、「気品」の3つを兼ね備えた女性を育てることにあります。21世紀に入ってから、この見学の理念をより時代に即した形に具体化できるよう努め、「高い品性をそなえ人と社会のために尽くす女性」というフレーズを掲げることになりました。

品性というと難しく聞こえるかもしれません。実は今年の中1生たちの学年の目標は「明るい挨拶、綺麗な言葉」となっています。挨拶とは他の人と関係を築く第一歩となるものです。どんな場所でも人と人との関係を楽しく豊に結べる力、チームワークを造っていける力を持っていること、inclusive leadership(場を包み込むような指導力)を発揮できることが品性なのではないかと考えています。

ですから、私達は勉強とは「仲間とともにやっていく勉強」であるし、学校とは「仲間とともに成長していける学校」なのだと考えています。

本校では国際学級を1クラス設置しておりますが、このクラスについては6年間クラス替えを致しません。小学部からの内進生、留学生、一般生が混在となって英語中心の学校生活を送る。まさに濃密なinclusive leadershipを養うための場であると考えています。

なお2013年度入試から2月2日の午後入試に一般学級枠を追加(従来は国際学級のみ)する予定です。

 

 

9.東洋英和女学院

 

 東洋英和という学校がどのような学校であるかを一言で言い表すのは難しいのですが、あえて言うならば「人と人とのつながりを大切にする学校」かもしれません。文化祭やバザーの時などに父母会の方たちが子どもたちと一体となって活躍されている姿をご覧になっていただければ、「なるほど」とお分かりいただけるかと思います。 

 人と人とがつながるといっても、社会的につながる、心と心でつながるなど、様々なつながり方があります。なんといっても本校では朝に行う礼拝の時間を通じて、お互いに霊的なつながりを結んでいるといってよいのではないかと思います。本校の生徒たちには自分のことを愛し肯定できる子が多いと感じておりますが、それは礼拝を通じて神様の愛を感じ、そのことによって自分が認められていると感じているからではないでしょうか。このようにして自分自身を認めることができれば、自然と他者を認めたい切にする心も養われていくのだと思います。

 東洋英和は受験に特化した学校ではありません。しかしその進学実績は小規模校ながら十分に誇れるものだと考えています。それは英語教育に注力しているためと言えるのかもしれません。本校では英語の授業は20名規模での少人数で行い、イングリッシュ・ルームではネイティブの先生方と自由にお話しすることができます。また毎年10名前後の生徒が奨学金を取得して海外へ留学していきます。そのような環境が生徒たちの進学を支える基盤となっているのだと思います。

 

1.三輪田学園

 

まず女子教育を女子校で行う意義についてお話したいと思います。思春期の男子と女子では心身の成長の仕方が異なることは知られていますが、これは脳の発達についても同じようなことがわかってきました。一般に女子は聴覚をつかさどる左脳から発達していくそうです。したがって思春期の女子は語学の習得などに強みを持つ反面、図形などの空間認知は苦手としています。反対に男子は視覚や知覚をつかさどる右脳から発達していくので、幾何など数学分野の習得に強みを持つそうです。このような能の発育特性に応じた指導カリキュラムを組めるというのは男女別学のメリットの一つなのではないでしょうか。

また、女子の思春期のというのは非常に揺れ動きやすい時期でもあります。そのような女子への応対、指導についてのスペシャリスト、「女性」を育てる場所として女子校は存在していると、そのようにお考えいただければよいかと思います。

もちろん、女子校で学ぶ意義ではそれだけではありません。よく女子校出身というとおしとやかなイメージをもたれがちですが、実は全く反対でして、大学に上がると共学出身の女の子の方が女の子らしく思われることの方が多かったりもします。女子校で生活するということは、力仕事なども男子に頼ることなく自分達でこなさなければなりません。女子校で学ぶことによって、他人(もしくは異性)に頼らない生き方を学んでいく、女子が女子として自立するための場所として女子校はあると言えると思います。

三輪田学園もそのような女子教育のスペシャリストとして125年の伝統を誇ります。本校の教育理念は「徳才兼備」の女性を育てること。学力だけでなく道徳教育も大事です。道徳教育というと、近年「キャリア教育」という言葉が多く用いられるようになりましたが、三輪田の道徳教育はむしろ生涯にわたる「生き方教育」ととらえていただければと思います。一週間の時間割の中に組み込まれた「読書」の時間では、本当に多くの本を読みますが、ただ読むだけでなく、その後に書く感想文も担任との間でしっかりとやり取りを交わしています。

また、今年から新たに始めた注文製のお弁当「ガールズ・ランチ」では、その売り上げの一部がアフリカの子どもたちの給食支援のために使われることになっています。献立についても大学の栄養学の先生と生徒達が一緒になって考えたりしています。そのような取り組みも、子どもたちが色々なことを考える一つのきっかけになるのではないかと思います。

 

2.山脇学園

 

本校はリーダーになりうる女性の育成を目指しています。リーダーになりうる女性とは、自分を知り、社会を知り、チャレンジ精神がありコミュニケーション能力を持つ女性のことです。

山脇学園では「山脇ルネサンス」ということで様々な改革を行ってきました。特に、併設していた山脇短大の跡地に様々な施設の増設が可能になりましたので、昨年度はEnglish IslandScience Islandという2つの施設を完成させ英語教育、理科教育のサポート体制を充実させました。English Islandにはネイティブの英語講師が常駐し放課後に自由に会話できるようになりました。Science Islandには物理と生物の研究施設を完成させたほか、今年度には屋外実験場も完成します。また昨年は早稲田大学を始めとする4つの大学と提携してScience Partnershipの実験講座を開設しましたが、今年も茨城大学や東海大学、東京都市大学などと連携して同様の講座を開設します。

また今年度は「自学館」も整備し、ここでは生徒たちが7時まで自習できるように開放することになりました。この自学館には調べ学習用の資料のほか、進路指導に関する資料なども備えてあります。さらに昨年度、実験的に「自学自習」の時間を導入し、生徒一人ひとりに自分の課題と向き合うよう、担当教員から課題を提示させました。実施した学年のご家庭からは、お子さんの自宅での学習時間が増えた点などを評価をして頂きましたし、生徒たちからも喜ばれています。今年度はこれを全学年に導入いたしました。こうした自学課題と向き合う場としても「自学館」は活用できると思います。

 

 

全体を振り返って

 

今年は、建学の理念や教育目標といったお話に加えて、子ども達と他者との関わり、また子どもたちの自信、自己肯定感といった課題に言及されていた学校が多かったかなと思います。

他校の説明会報告でも書きましたが、「自己肯定感」というキーワードは、この女子校アンサンブルでも毎年のように取り上げられます。揺れ動く思春期、自分探しをしていくこの時期に、子ども達が様々なチャレンジをしていく土台となるもの、ひるみそうになる背中を押してくれるもの。それがこの自己肯定感なのかもしれません。