2012年4月29日 女子校アンサンブル説明会報告

青夢舎

 

学習院女子大学で開催された、私立中学による女子校アンサンブルは今年で10回目になります。例年通り参加校は9校で、五十音順に、跡見学園、学習院女子、恵泉女学園、香蘭女学校、実践女子学園、東京女学館、東洋英和女学院、三輪田学園、山脇学園の各校です。

プログラム内容は、各校のミニ説明会(各15分×計3回)。それと同時並行で、個別相談会および学習相談会が開かれていました。この報告では、各校のミニ説明会の中から、特に目についた内容についてご紹介いたします。

(※ ホームページに掲載しています、2006年、2007年、2009年の説明会報告もあわせてお読みいただけると、各学校の姿がより詳しくわかるかもしれません)

 

1.三輪田学園

 

まず女子教育を女子校で行う意義についてお話したいと思います。思春期の男子と女子では心身の成長の仕方が異なることは知られていますが、これは脳の発達についても同じようなことがわかってきました。一般に女子は聴覚をつかさどる左脳から発達していくそうです。したがって思春期の女子は語学の習得などに強みを持つ反面、図形などの空間認知は苦手としています。反対に男子は視覚や知覚をつかさどる右脳から発達していくので、幾何など数学分野の習得に強みを持つそうです。このような能の発育特性に応じた指導カリキュラムを組めるというのは男女別学のメリットの一つなのではないでしょうか。

また、女子の思春期のというのは非常に揺れ動きやすい時期でもあります。そのような女子への応対、指導についてのスペシャリスト、「女性」を育てる場所として女子校は存在していると、そのようにお考えいただければよいかと思います。

もちろん、女子校で学ぶ意義ではそれだけではありません。よく女子校出身というとおしとやかなイメージをもたれがちですが、実は全く反対でして、大学に上がると共学出身の女の子の方が女の子らしく思われることの方が多かったりもします。女子校で生活するということは、力仕事なども男子に頼ることなく自分達でこなさなければなりません。女子校で学ぶことによって、他人(もしくは異性)に頼らない生き方を学んでいく、女子が女子として自立するための場所として女子校はあると言えると思います。

三輪田学園もそのような女子教育のスペシャリストとして125年の伝統を誇ります。本校の教育理念は「徳才兼備」の女性を育てること。学力だけでなく道徳教育も大事です。道徳教育というと、近年「キャリア教育」という言葉が多く用いられるようになりましたが、三輪田の道徳教育はむしろ生涯にわたる「生き方教育」ととらえていただければと思います。一週間の時間割の中に組み込まれた「読書」の時間では、本当に多くの本を読みますが、ただ読むだけでなく、その後に書く感想文も担任との間でしっかりとやり取りを交わしています。

また、今年から新たに始めた注文製のお弁当「ガールズ・ランチ」では、その売り上げの一部がアフリカの子どもたちの給食支援のために使われることになっています。献立についても大学の栄養学の先生と生徒達が一緒になって考えたりしています。そのような取り組みも、子どもたちが色々なことを考える一つのきっかけになるのではないかと思います。

 

 

2.山脇学園

 

本校はリーダーになりうる女性の育成を目指しています。リーダーになりうる女性とは、自分を知り、社会を知り、チャレンジ精神がありコミュニケーション能力を持つ女性のことです。

山脇学園では「山脇ルネサンス」ということで様々な改革を行ってきました。特に、併設していた山脇短大の跡地に様々な施設の増設が可能になりましたので、昨年度はEnglish IslandScience Islandという2つの施設を完成させ英語教育、理科教育のサポート体制を充実させました。English Islandにはネイティブの英語講師が常駐し放課後に自由に会話できるようになりました。Science Islandには物理と生物の研究施設を完成させたほか、今年度には屋外実験場も完成します。また昨年は早稲田大学を始めとする4つの大学と提携してScience Partnershipの実験講座を開設しましたが、今年も茨城大学や東海大学、東京都市大学などと連携して同様の講座を開設します。

また今年度は「自学館」も整備し、ここでは生徒たちが7時まで自習できるように開放することになりました。この自学館には調べ学習用の資料のほか、進路指導に関する資料なども備えてあります。さらに昨年度、実験的に「自学自習」の時間を導入し、生徒一人ひとりに自分の課題と向き合うよう、担当教員から課題を提示させました。実施した学年のご家庭からは、お子さんの自宅での学習時間が増えた点などを評価をして頂きましたし、生徒たちからも喜ばれています。今年度はこれを全学年に導入いたしました。こうした自学課題と向き合う場としても「自学館」は活用できると思います。

 

 

3.跡見学園

 

本校の創立者である跡見先生は、幕末の頃は勤皇思想に燃えた女性でした。教育者として活動を開始したのは福沢諭吉が慶応義塾を設立したのと同じくらいの時期です。そのような熱い思いを持っていらっしゃる先生ですので、明治七年(1875年)に本校を設立したとき、「新しい日本を支える女性の育成」を教育の目標として掲げました。

跡見学園の教育理念は「目と手と心」。本物を見分けるための鑑識眼を育成し、物を作り出す、情報を相手に発信する手を養い、目と手をつかさどる存在としての心を養う。この三つは、どれか一つでも欠けてはならないものです。今や長寿社会となり、生涯学習という考え方もすっかり定着した感がありますが、そのような学習を支える基盤となる「目と手と心」の育成を跡見学園はしっかりやっていこうと考えています。

 

 

4.学習院女子

 

本校の生徒たちが卒業式で歌う曲の中に「金剛石は磨かなければ光らない」という意味の一節があります。毎年、この部分を歌う時は泣き出してしまう生徒も出てくる一節ですが、金剛石(ダイヤモンド)を磨いていける学校でありたいと学習院女子は考えています。子ども達には自分で考えて自分で表現する力を伸ばして実践するよう指導しています。

学年の担任団は男女や年代の様々な教員を配し、うまくバランスが取れるように心がけています。図書館の蔵書は八万冊を数え、かなりの規模なのではないかと思います。災害時の備蓄は全校生徒が3日分学校にとどまれる量を備えてあります。

 

 

5.恵泉女学園

 

恵泉が目指しているのは戦争をなくし平和に貢献できる女性の育成です。髪と人に使え、自然をいつくしみ、世界の平和に役立てる、そんな女性を育てることが恵泉の目標です。

そのためにはどうしたらよいか。まず恵泉には制服がありません。制服は子ども達一人ひとりの個性を封じ込める仮面だと考えています。そうではなく、「ありのままのあなたであって良いのですよ」というのが、恵泉に入学してくる子ども達への学校からの最初のメッセージです。私たちは生徒一人ひとりが神様の作品であると考えています。他の学校ですと、「この学校の制服に恥じぬ生活を送りなさい」と教えるかもしれませんが、「あなたの心に恥じぬ生活を送りなさい」というのが私たちの願いです。

この自然は多種多様な個性が不思議な調和を奏でています。校舎の屋上にあるビオトープには実に様々な木々が生い茂っている。恵泉もそのようなものを大切にしていきたいと考えています。聖書、国際、園芸は恵泉の教育の3つの基本精神をなすものです。

恵泉ではあれをしなさい、これをしなさいということはしません。「あなたはどう思う?」という生き方を問う、内面を見つめる教育を行っています。そのために大切にしているのが朝の礼拝の時間です。学校が提示する一つの人生の指針としてキリスト教は存在しています。礼拝の時間では、生徒一人ひとりが感話を行う機会があります。自分が日ごろ何を感じているのか、考えているのかを表現することで、自分らしくあっていいんだという自己肯定間、安心感を養っていきます。その積み重ねの中から自分のやりたいことを子ども達は見つけていくのだと思います。

なかなか目に見える形ですぐに結果が現れるものではありませんが、子ども達が自分の人生を生きていくうえで大切な土台を耕す教育を恵泉は行っている、そのように私たちは確信しています。

 

 

6.香蘭女学校

 

本校は、英国聖公会の宣教師が「キリスト教の教えと日本女性らしい繊細さ、優しさをあわせ持つ女性」を育てられたらどんなに素敵なことかと考え、設立されました。香蘭の一日は朝の礼拝から始まります。新しい一日が神様のお守りによって加えられたことへの感謝を通じて、一人ひとりの生命を大切にする心が養われます。

香蘭では「私」ではなく「私たち」を大切にしています。お祈りを通じて誰かに心を寄せていく生き方。また色々な人々に支えられて不安を乗り越え、部活動や学校行事などの様々な目標を達成していくプロセスをとても大事に考えています。

 

 

7.実践女子学園

 

本校が目指しているのは堅実にして質素、品格ある女性の育成です。近代国家建設のために自立した、自分の意見を持ち自ら行動できる女性、また子どもの教育を担える女性を育てることの必要性を痛感した創立者が実践女子学園を設立しました。現在ではキャリア教育、感性表現、国際理解の3本柱に学力を加えた「3プラス1」が本校の教育目標です。

子ども達が他者とどのように関わり、比較をし、互いを認め合っていければよいのか。そのためには何よりも自分に自信を持つことが出発点になります。実践女子学園では、生徒たちに自信を持たせるための様々なプログラムを用意し、子ども達が学力だけでなく「他者と関わる力」を身につける6年間となることを目指しています。

 

 

8.東京女学館

 

 東京女学館の建学の理念は世界に通用する女子教育を行うこと、「国際性」、「知性」、「気品」の3つを兼ね備えた女性を育てることにあります。21世紀に入ってから、この見学の理念をより時代に即した形に具体化できるよう努め、「高い品性をそなえ人と社会のために尽くす女性」というフレーズを掲げることになりました。

品性というと難しく聞こえるかもしれません。実は今年の中1生たちの学年の目標は「明るい挨拶、綺麗な言葉」となっています。挨拶とは他の人と関係を築く第一歩となるものです。どんな場所でも人と人との関係を楽しく豊に結べる力、チームワークを造っていける力を持っていること、inclusive leadership(場を包み込むような指導力)を発揮できることが品性なのではないかと考えています。

ですから、私達は勉強とは「仲間とともにやっていく勉強」であるし、学校とは「仲間とともに成長していける学校」なのだと考えています。

本校では国際学級を1クラス設置しておりますが、このクラスについては6年間クラス替えを致しません。小学部からの内進生、留学生、一般生が混在となって英語中心の学校生活を送る。まさに濃密なinclusive leadershipを養うための場であると考えています。

なお2013年度入試から2月2日の午後入試に一般学級枠を追加(従来は国際学級のみ)する予定です。

 

 

9.東洋英和女学院

 

 東洋英和という学校がどのような学校であるかを一言で言い表すのは難しいのですが、あえて言うならば「人と人とのつながりを大切にする学校」かもしれません。文化祭やバザーの時などに父母会の方たちが子どもたちと一体となって活躍されている姿をご覧になっていただければ、「なるほど」とお分かりいただけるかと思います。 

 人と人とがつながるといっても、社会的につながる、心と心でつながるなど、様々なつながり方があります。なんといっても本校では朝に行う礼拝の時間を通じて、お互いに霊的なつながりを結んでいるといってよいのではないかと思います。本校の生徒たちには自分のことを愛し肯定できる子が多いと感じておりますが、それは礼拝を通じて神様の愛を感じ、そのことによって自分が認められていると感じているからではないでしょうか。このようにして自分自身を認めることができれば、自然と他者を認めたい切にする心も養われていくのだと思います。

 東洋英和は受験に特化した学校ではありません。しかしその進学実績は小規模校ながら十分に誇れるものだと考えています。それは英語教育に注力しているためと言えるのかもしれません。本校では英語の授業は20名規模での少人数で行い、イングリッシュ・ルームではネイティブの先生方と自由にお話しすることができます。また毎年10名前後の生徒が奨学金を取得して海外へ留学していきます。そのような環境が生徒たちの進学を支える基盤となっているのだと思います。

 

 

 

全体を振り返って

 

今年は、建学の理念や教育目標といったお話に加えて、子ども達と他者との関わり、また子どもたちの自信、自己肯定感といった課題に言及されていた学校が多かったかなと思います。

他校の説明会報告でも書きましたが、「自己肯定感」というキーワードは、この女子校アンサンブルでも毎年のように取り上げられます。揺れ動く思春期、自分探しをしていくこの時期に、子ども達が様々なチャレンジをしていく土台となるもの、ひるみそうになる背中を押してくれるもの。それがこの自己肯定感なのかもしれません。