2009年5月8日 夢限大 私立中高合同説明会 参加雑感
以下は、大井町きゅりあんで開催された、「夢限大」という名の合同説明会に関する雑感です。会場で催されたパネル・ディスカッションの模様をお伝えしながら、最後に簡単なコメントをつけてみました。
ディスカッションのテーマは「私学の独自性」。ディスカッションに先立って、玉川聖学院の水口校長先生が同じテーマで基調講演を行ったことを受ける形で進められました。司会者の質問に答えるパネラーとして参加されたのは、明大明治、本郷、八雲学園の先生方、桐光学園、東京女子学園、芝のOB・OGの方々、そして品川女子学院、小野学園、世田谷学園に通われている生徒さんの保護者の方々です。
Q.「みなさんの『我が校の変わったところ、独自だなと思うところ』を教えてください」
八雲学園
「チューター方式という仕組みがあって、クラス担任以外の先生が、生徒一人一人について、お兄さん・お姉さんのような相談相手になってくれます。例えば、定期試験の一週間前に提出することになっている勉強計画表の作成は、チューター役の先生と相談しながら行います。試験終了後に計画表の実施状況のフォローアップなどもしてくれます。チューター役の先生は24時間体制で生徒たちの相談に乗れるよう、あらかじめ携帯電話の番号や、自宅の住所などの情報を彼らに教えておくことになっています。試験前日に質問の電話や、不安になって相談の電話をしてきたりする生徒もいて、後でとても感謝しているようです」
明大明治
「校舎が現在の調布キャンパスに移転して2年目ですが、都内にあった頃と比べると敷地面積が5.5倍の広さになりました。それはよかったのですが、おかげで新入生の迷子になることがよくあります。なにしろ、校舎の端から中央の玄関口まで、ゆうに100mはあるのではないかという広さで、特別教室も12室あります。授業と授業の間の移動時間で『あいつ、どこへ行ったんだ??』なんて、姿が見えなくなることがでてきてしまうようです。まあ、1学期終了くらいには大体慣れるようですが、教員である私も未だに迷うことがあります(笑)」
本郷
「本校のユニークな点というと、多彩なOBがいるところでしょうか。漫画家の秋本治さん(註・『こちら亀有公園前派出所』の作者)や水泳の北島康介選手。北島選手は、教育実習生として本校に指導にも来ていて、現在の高1が指導を受けていました。現在も全中や高校総体などでも活躍するような水泳の有力選手が多いのですが、不思議なことに本校にはプールがないんです。近隣にある有名なスポーツクラブに通っている選手が多くて、本校の水泳の授業などもそちらと提携して行っております。」
世田谷学園
「仏教校ですので、生徒手帳にはお経が載っていますし、構内には座禅堂があります。生徒たちは座禅を年に4回組む機会があるがあるので、卒業するまでには自然と座禅を組むのがうまくなります。またそのおかげで、いつのまにか集中力がついてくれましたし、じっと座っているうちに「自分とは何か」といったことなども考えさせられました」
桐光学園
「とにかくテストの多い学校だと思います。色いろな小テストがあるのですが、朝のホームルームの時間に行う「10分間テスト」というのは、その結果しだいでは翌週の補習の対象になったり、そうでなくても先生によっては結果が悪いと罰当番が待っていたりということで、みんな必死になって勉強していました。そのおかげで、定期テストの対策なども「10分間テスト」の復習を行えば自然とできていましたし、ありがたかったと思います」
東京女子学園
「制服のスカートに特徴がありまして、裾から10cmくらいのところに白い線が引いてあるんですね。それがとにかく目立つので、現役時代は嫌でたまりませんでした。すると高3になったときに、学校と生徒会とで話し合いをして生徒投票で制服を変更するかどうか決めることになったんです。その結果は・・7票差で白線のスカートが存続することに決まりました。そしてそれ以後、このスカートのことを嫌がる生徒もいなくなったんです。それだけこのスカートのことを気に入っている人、誇りに思っている人がいるんだなあ、、ということで、改めて制服の持っている伝統と誇りというものを認識させられました。卒業した今では、私もこの制服のスカートを着られたことを誇りに思っています」
芝
「増上寺が母体となって設立された学校ですので、年に1回増上寺へ行ってお坊さんの説法を聞いたり雅楽を納めたりといったことを行っています。正座の仕方も中1の頃はぐらぐらと左右に揺れていたのが、上級生になるほどきれいに座れるようになりますよ。
技術の教具として配られる道具は本格的な大工道具一式かと見まがうほどのものです。以前に組み立て式の家具を買ったところ、息子がやってみたというので任せたところ、楽勝で完成しました。本人いわく「学校の技術の授業よりもずっと簡単だった!」そうです。
また、例年、6年間皆勤の生徒が全体の3割強出るそうで、卒業式の時には壇上で親子そろって表彰されるようです。我が家もあと1年間、表彰目指して頑張ります!」
品川女子学院
「本校はPTAの役員さんが225名いらっしゃって、これは全体の20%の方が役員を務めていらっしゃる計算になります。なぜそんなに役員が多いかというと、希望者の方が全員役員になれるからで、その数は年々増加しています。よく「品川女子はPTA活動がさかんですね」といわれますが、それもこの役員の数の多さがあるからだと思います。
また、学校からも各クラスに3万円、学年全体に4万円のPTA費が支給されて、これは自由に使ってよいお金ですので、次々と色いろな活動のアイデアが出されるんです。学校の施設はも自由に貸し出ししてくれますので、自然と学校へ行く回数も増えて先生方とも仲良くなれますし、PTA関係のお友達も増える結果につながってくれています」
小野学園
「本校は小規模な学校なのですが、新入生が入学式でつけるコサージュやポーチはすべて在校生の手作りのものです。入試を終えた2月には新入生対象のウェルカムパーティーが開かれるのですが、それも1つ上の学年の生徒さんたちが一人ひとりの新入生を担当してくれます。新入生としては、上級生が自分たちの入学を心待ちにしてくれているということが実感できて、とても嬉しくかんじているようです」
Q.「みなさんの学校生活やクラブ活動などで変わっているところを教えてください」
世田谷学園
「校門のところに白線があるのですが、そこのところで登下校の際必ず一礼をするという習慣があります。そのようにする理由については、そこで立ち止まることで自分を見つめなおすように促すとか、その日受けた授業への感謝の思いを込めたものだとか、様々な説があるのですが、実感としてあるのは「心に余裕を持たせてくれるもの」だったなということです。どれだけ忙しい時にも、わざわざその場所では立ち止まって一礼をしなければならない。そのことでかえって、心の中にゆとりを生じさせてくれたのではないかと思うのです。また、部活の際にも立ったまま黙想をすることが日常的にあって、こちらも自分を見つめさせてくれるよい機会だったと思います」
桐光学園
「今はもう廃止されてしまったということですが、月に1回の生活指導の日で必ず髪型や服装などをチェックされました。そのおかげで、自分の格好だとか身だしなみといったことに注意できるようになりましたし、就職活動のときにもとても役に立ったと思っています」
東京女子学園
「文化祭の時には必ず先生方がダンスを踊ることになっています。それも遊び半分というよりは、かなり本気で取り組んでいらっしゃるので、公演のときには在校生も卒業生もみんなで一所懸命応援しています。そうやって学校全体が一つになっていくことを現役時代には感じていましたし、先生方の姿を見て、イッショウケンメイに物事に取り組むことの大切さを教えてもらったように思います」
Q.「みなさんの学校と保護者のかかわりという点で、ユニークなものはありますか。またお子様の様子を見ていて、独自なものがあるなと思うところはありますか」
芝
「学園祭ではPTA活動の紹介を行っております。PTAの役員はいったん引き受けられると長期間継続される方が多くいらっしゃいます。受験生の保護者の方からの質問攻めにあったりしてなかなか大変ではあるのですが、学校をお助けできるからと思って頑張ってやっています。PTA役員を務めることで学校のせんせいと仲良くなりますと、定期試験の際の対策の立て方などもさまざまにアドバイスして頂けたりして、なかなか有益なことだと思います」
品川女子学院
「中学に入学した当初から「あなたは将来何になりたいの?」という問いを突き詰められます。中1のうちから何回もそうしたアンケートに答えていくなかで、自然と自分の将来について考えるようになるようです。また文化祭の企画書なども子どもたちが自分で考えて、売り上げや現金収支などのお金の管理なども任されるので、文化祭の前日や当日なども必死になって子どもたちは頑張っています」
小野学園
「ロールモデル教育ということを行っていまして、各界で活躍されている女性のお話を聞いてそのお仕事につくために必要な四角だとか勉強だとか、そういったものを子どもたちが学べるようになっています。昨年度は一年に9回もそうした講演の機会があったのですが、さすがに少し多すぎたので今年はもう少し減らして、子どもたちがじっくりとお話しを聞けるように改善していくことになりました」
Q.「みなさんの学校の授業や学校行事に関して、ユニークだなと思うものを教えてください」
八雲学園
「本校は英語の行事が多い学校としてだいぶ知られてきたようですが、特にEnglish Fun Fairという、言わば大規模な英会話教室のような英語漬けの一日なんかはドクトクだと思います。この日はネイティブの英語の先生だけでも60人以上いらっしゃって、生徒たちと一日中おしゃべりしています。中3くらいにもなると臆すことなく堂々とネイティブの先生に話しかけてる様子を目にしますね」
明大明治
「六大学野球の応援ツアーに必ず行くのが変わっているところでしょうか。今年は中学1年生と高校1年生が参加しますが、大学の応援団と一緒になって応援をしています。本校の校歌は大学の校歌と同じですので、みなで同じ校歌を歌うことになって「明治魂」を注入することになります」
本郷
「高校の修学旅行は必ず陸路で高松を訪れることになっています。高松は本校の創設者の出身地でもありますので、学校創立のルーツをたどるたびになるわけです。毎年、地元の名勝である有名な日本庭園に行くのですが、そこで生徒たちを案内してくれるボランティアの方が本当に熱心な方が多く、バスの集合時間にも間に合わないんじゃないかと思うくらいに熱心に説明してくれます。そのような真摯な姿に、生徒たちも感銘を受けて帰ってくることが多いようです」
Q.「最後に、受験生のみなさんへ学校選びのアドバイスなどありましたら教えてください」
芝
「色いろな学校の見学会に行きましたが、親の側の希望は最後まで息子には伝えませんでした。なんというか、押し付けにならないようにという点には最後まで気をつけました」
品川女子学院
「文化祭や体育祭など、学校行事のときの生徒さんたちの素の姿を見られるのが一番だと思います」
小野学園
「そうですね、同じようなことになりますが、もしお時間がゆるすのであれば、生徒さんたちの登下校の姿、普段の様子などを見ていただいて、その姿がお子様に合うかどうかをご検討いただけると良いと思います」
今回のパネルディスカッションで取り上げられた各学校のコメントは、それぞれに独自なものであると同時に、他の私立学校でも形を変えて目にすることのできるものがたくさん詰まっているように感じました。僕自身の古い記憶をたどってみましても、広い校舎のなかで迷子になった経験、PTA活動を通じて先生方と仲良くなった母の姿、先生方からかけていただいた様々なアドバイス、学校全体の団結心、、色いろなことを思い出しながらディスカッションの様子を聞いていました。黙想の習慣や、お坊さんの説法を聞くという経験は、他の宗教系の学校でも多く見られる光景ですし、そのなかで「自分とは何か」、「将来私は何者になりたいのだろう」といった問いかけを行うことにもなるでしょう。また各界のOBOGの方の講演や自分探しのアンケートといったキャリア教育に仕分けされるような活動を通じて、そういった「自分への問い」を行っている学校も多くあります。
例年、この説明会のパネルディスカッションは議題の設定や役割分担などで苦労されていて伝わりにくいものも多かったのですが、今年は非常によくまとまった内容に仕上がったように思います。この報告を通じて、6年間で子どもたちがどのようなシーンと出会うことになるのか、その姿が少しでも描きやすくなるのでしたら幸いです。