2007年5月28日 獨協中学 塾対象学校説明会報告
青夢舎
1.永井校長先生より
・本校の校長に就任して以来8年ほどになりますが、「当たり前のことを当たり前にできる」子が少なくなってきたと感じています。つまりきちんと挨拶をするといったようなことです。同時に、集中力や勤勉さといったものも欠けてきている。情報化がすすんでいる中での弊害なのかもしれませんが、耐性が落ちてきているように思います。
・本校には小さい頃からしつけられている、我慢強く思いやりのあるお子さんにきていただきたいと考えています。そうやって愛情を持って育てられたお子さんは、いくらでも能力を伸ばすことができるからです。獨協は「人間教育」を売り物にしてきたけれど、その人間教育も、「誰に対しても当てはまる・正しい」ことではなく、これからはもっと一人ひとりの実例を見ながら語っていかなければならない、そのように感じています。
・そこで校長就任してしばらくしてから、毎朝、登校してくる子どもたちと話すように心がけるようになりました。先生方に向けのカウンセリングマインドの講習会も開催するようにしました。そうやって、今まで以上に一人ひとりの生徒たちを見続けた成果が、今春の大学入試で医歯薬系合格者61名という過去に例を見ない実績につながったと考えています。
・去年から、従来の「人間教育」に加えて、出口にもこだわるように改革を始めました。今までは伸び伸びとした自由な雰囲気の中で、子どもたちも自分から勉強をしていた。でも、近年はそういう子どもたちばかりではなくなってきたんですね。子どもたちが自分の望む大学へいけるだけの学力をつけさせることを目的に、カリキュラム改革を進めています。英語や数学ではひと通りの目処がついたので、次は理科のカリキュラムを変えていこうと考えています。
・また、人間教育の一環として、昨年から本校では環境教育にも全校を挙げて取り組み始めました。気温上昇の影響か九州地方では稲が実を結ばなくなったという話も聞きます。この地球上にある生命あるものと共生できるような社会を築く、そうした志なり知恵なりを持った人間を育てていきたいと考えています。昨年は校内に本格的なビオトープを完成させ、これはNHKのニュースでも取り上げられました。今年は屋上緑化を進めていく予定です。
2.笠井中学教頭先生より
・2008年度入試から、従来の2月1日、5日に加えて、2月2日にも入学試験を実施することになりました。受験科目はすべて4教科受験となります。1日の試験に関しては、インターネットによる即日発表を実施する予定です。
様々なカリキュラム改革を進めた結果として、今まで以上に学ぶ意欲のある生徒に入学していただきたい、そのような生徒さんのご期待に応えられるだけのカリキュラムを調えることができたと考えた結果です。
・英語で使用している『PROGRESS 21』のメリットは、文法・語い・文章内容が非常に豊富な点、また音声教材が充実している点にあります。生徒一人ひとりにSDレコーダーを配布しているので、彼らはいつでも発音・聞き取りの練習が可能です。
反面、内容が充実しすぎているあまりに、消化不良を起こしてしまう生徒も出る恐れはあります。そこで各課の新出単語については、学校独自に作成したデータベースに基づき、全検定教科書に共通して記載されている単語と、一部検定教科書に記載の単語、それ以外単語と3段階にランク分けして、最重要項目が分かるように工夫したプリントを生徒さんたちに配布しています。文法事項についても、同様にプログレスの内容を改めてまとめ直した参考教材を配布しています。
(数学については、昨年度の報告書をご参照下さい)
・2007年度大学入試の実績は、医歯薬系で61名と昨年の3倍以上の結果となりました。反面、国公立大は11名で半減してしまい、この点は大いに反省すべき点と考えています。早慶上智、GMARCHなどは前年並みです。2年後にはプログレスの完全実施を開始したが学年が大学入試を迎えるので、どのような成果につながるか楽しみにしています。英検の合格実績などを見ても、プログレス導入の成果は確実に上がっていると感じています。
・本校では補習と講習とを明確に区別しています。基礎学力の底上げを目的とした補習は、それぞれの定期テストごとに指名制で実施します。これは中学1〜2年生が中心です。
一方で、中学3年生以上を中心に、主に長期休暇期間中に希望者対象の講習会も実施しています。中3・高1は主に主要3科、高2からは理科や社会、ドイツ語などでも各休暇期間中に講座が予定されています。
・獨協のクラブ活動で人気が高いのは演劇部です。男子校の演劇部というのも珍しいのですが、アーチェリー部などとともに、全国レベルの活動を行っているクラブの一つです。しかし、活動自体は外部からコーチを招くといったものではなく、主に上級生−下級生の人間関係の中で行っている、伸び伸びとしていると思います。
3.入学試験について
・国語、長文は3〜4ページのものを2題出題。例年記述問題が多いが、部分点を必ず設けてあるので、あきらめずに最後まで書いてほしい。合格している受験生の答案には、そうやって部分点を積み上げたものが多いです。それから、文末表現には気をつけてください。設問の要求に従った文末表現で終えられていない受験生は少なくありません。
また漢字の書き取りは、画数がはっきりと分かるように丁寧に書かれていないと○はもらえません。
・算数は、設問に書かれている通りにていねいに順番に作業し、作図をしていると必ず解けます。欄外の途中計算なども部分点の対象にしますので、しっかりと途中式なども書いてください。
4.感想
説明会終了後は校舎見学をさせていただきました。各教室のつくりが、縦長というよりは横長の印象で、座席の配置は6人×7列なのですが、一番後ろの席に座っている生徒さんでも、十分に前の黒板が見やすくなっているのではないか、という印象を受けました。
また図書館の蔵書(7万点)や展示なども大変充実しています。まもなく開校して125周年を迎えようという古くからの伝統も生かされているのか、和書だけでなく英書、独書の類がしっかりと揃えられている。なかなか最近貸し出されることは少なくなってきているそうですが、それでも各学年に数名は語学好きの生徒さんがいらっしゃると、図書部の先生が仰っていました。充実した資料や展示に触発されてか、獨協の図書館は全国的に見ても、生徒さんたちの貸し出し冊数が非常に多いということで、各地から問い合わせが来ることもあるそうです。中高一貫校の図書館というと、例えば武蔵中なども大変有名ですが、この獨協中の図書館もなかなかのもので、個人的にはこの図書館の存在だけでも、受験生の皆さんが志望校に組み入れる価値は十分なのではないかと思ったりもします(笑)
説明会全体のお話も、昨年伺ったときよりもだいぶ力強い先生方のお話に頼もしいものを感じましたし、かといって決して勉強だけではない、やはり「人間教育」こそが原点なのだということは、しっかりと伝わってきました。